COLUMN
コロナ不況と内部留保
大変な時代になりました。
でも、全国民に10万円ずつくれるとか。安倍ちゃん、ありがとう。これから毎月頼むな。
ここで思い出されるのが、昔から言う「一人口は食えぬが二人口は食える」って格言。実際、我が家は4人家族で40万円もらえるとすると、これはかなり大きい。ホントに毎月くれるなら、もう仕事辞めたって良いんじゃないかってレベル。まぁ、辞めるほどの仕事はしていませんが。
ふむ。
たまには仕事のハナシでも書いてみようか。
昨日今日は珍しく仕事をして、ここのところ毎日2~3本観ていた映画を1本も観なかった。
で、何をしていたかというと、雇用調整助成金の申請に向けての準備。
この制度は、売上の減少した企業が従業員を休ませた場合、その休んだ従業員に支払った金額の一部を、国が補償するというもの。
経営者ぽいの好き。
なぜそんな制度を利用しなければいけないか。
「コロナとか言っても、薬局は関係ないでしょ。むしろ良いぐらいじゃ?」
みたいなことをよく言われる。
まぁね、そのテのことは言われ慣れている。昔から「薬九層倍(くすりくそうばい)」って言うしね。
でも皆さんの予想に反し、ぶっちゃけ経営危機なのだ。
3月の前年比は、かなりのマイナスだった。
ただ、これはやむを得ない。薬局の売り上げは、季節要因が非常に大きい。今年は奇跡的なレベルで花粉症が少なかった。
2月と3月の比較では、処方箋の枚数がほぼ同じで、金額はかなりの上昇。
「客単価の上昇だ」
「ほら、やっぱり儲かってる」
「これがコロナ太りって奴ですか」
薬局のことを知らない諸君が、そう思うのは仕方がない。
薬局経営者の中にも、まだ気が付いていない奴がいるかもしれない。でも、どんなにマヌケな経営者でも、2ヶ月後、5月の数字を見れば、ことの重大さに気が付くだろう。
おそらく、コロナ騒動の行く末にかかわらず、この先(遅くとも5月には)薬局業界は大騒ぎになると思う。
このことを理解するためには、まずは薬局のビジネスモデルを知る必要がある。
ひと口に「薬局」と言っても、いくつかのタイプがある。
ドラッグストアも薬局だが、ドラッグストア業界の実情について、ぼくは何も知らない。
では、調剤薬局はどうだろう。
亀田薬局も調剤薬局に含まれる。
「あれ?亀田薬局は一般用医薬品を結構置いてるじゃん。調剤薬局って一般用医薬品をほとんど置かずに調剤だけしてるイメージだけど」
という声もあるかもしれない。その認識も間違いじゃない。
一般用医薬品は調剤との比較で、売り場面積なら6:4も、売上は1割以下というのが亀田薬局の実態。やっぱり調剤薬局なのだ。
調剤薬局は、その規模において大手と中小を分けて考える必要がある。大手と中小では、取引条件がまったく違うから。
だから、ぼくがここで言う「薬局」とは、中小の調剤薬局のこと。
まず、大いなる誤解をといておく必要がある。
少なくともビジネスモデル的には、薬局は「薬屋」ではない。
薬を扱ってはいるが、薬を売って利益を出しているワケではないのだ。
簡単に言えば、薬価が100円の薬を、99円か98円で仕入れている。そして、当然のようにロスが出るので、はっきり言って、薬の流れだけを見るなら、赤字。
大手調剤薬局と取引条件が違うというのは、そこだ。大手の仕入れ値は50円くらい(と聞いたことがあるけど実情は知りません)。
じゃあ、中小の薬局はどうやって利益を上げているのか。
それは、調剤技術料。つまり、手数料。
その手数料が、医療費削減の流れで毎年削られている、というのも重大事ではあるけれど、それはまた別の話。
まずは、薬局って手数料商売なんだってことを知って欲しい。
たとえば、処方箋を手に10,000円払った彼も、同じく処方箋とともに100円支払った彼女も、薬局にもたらす利益は、どちらも500円。もちろんこの数字は正確ではないが、ざっくりとした理解で良いなら、これで大きな間違いはない。
処方箋1枚につき、だいたい500円。薬局とは、そういう商売なのだ。
以上をふまえた上で、「3月は処方箋の枚数がほぼ同じで、金額はかなりの上昇」ということを思い出してもらいたい。
金額の上昇の理由は明らか。皆、たくさん薬をもらったのだ。
ライブハウスやナイトクラブには行かない田舎の老人(=亀田薬局の客層)にとって、最大のホットスポットとは、病院。不要不急の診察は避けたい。
たとえば、月イチで通院し、毎回1ヶ月分の薬をもらっていた人が、3ヶ月分の薬をもらったときに、処方箋一枚当たりの金額が上昇する。
その結果、薬局の利益は1/3になる、という理屈をご理解いただけるだろうか。
処方箋1枚で500円。月イチなら3ヶ月で1,500円。3ヶ月に一度なら、3ヶ月で500円。1/3。
来店客の全員が、そんな極端な長期処方になるわけではないので、全体で1/3はさすがにないと思うけど、どうだろう、3割減くらいにおさまってくれるだろうか。
ぼくが経営だなんだと家業に口を出し始めて、15年くらい経つ。
その方針を巡って、親とはことごとく意見が異なった。中でももっとも対立したのが、利益が出た際のカネの使い道。
親は、「税金を払うのはもったいないから、全部使え」と。
ぼくは「税金払って内部留保せよ」と。
10年ほど前までは、薬局業界全体が好調で、誰が経営しても儲かる、と言われていた。その時期にせっせと内部留保を積み上げてきた。4年前に駒ヶ根店を閉店してからは、利益もほとんどなかったので、内部留保もへったくれもなかったんだけど。
赤字の規模やコロナ不況の続く期間にもよるけれど、内部留保のおかげで、何とか乗り越えられるのではないか、との希望的観測。
「オレの言った通りじゃねーか」
「なにが?」
「内部留保なかったら、半年で潰れてたぞ」
「わしゃ、知らんに」
ここ最近、上場企業の内部留保が過去最高だと、批判の声が大きかった。しかし、コロナ騒動のような危機を前にしたとき、会社を救うのは現金以外にない。現金がなかったら、従業員に給料が払えなかった。
でもまあ、自分の給料はガッツリ削らなきゃいけないだろうなぁ。
貧乏です。誰かおごって。
2020年4月17日