COLUMN
現代結婚理論(Modern Marriage Theory)
ツイッターのタイムラインが賑やかだ。
「何言ってるのか分からない」
「質問の答えになっていない」
「よくあれでトップが務まるな」
安倍ちゃんのこと?いまさら?
と思ったら、吉本興業の社長だって。どうでも良い。
ほとんどテレビを見ないので、吉本興業がどうなろうが、よしもと芸人がどうなろうが、どうでも良いのだ。唯一週1で見かけるよしもと芸人が平畠啓史。「Jリーグジャッジリプレイ」(DAZN)。あれは素晴らしい番組だ。
ただ、テレビは見ないが、ネットはガッツリ見ている。だから、この度の騒動のことも、記事は一通り読み、転載された動画もいくつか見た。
その中でぼくが感心したのが、加藤浩次だ。自らがMCを務めるテレビ番組でブチ切れたというあれだ。騒動の帰結がどうなるかは分からないが、ぼくは加藤を応援したい。
ところが、世間(というかヤフコメあたり)では否定的な見解が多くて驚く。
「興奮して混乱させた」
というのが一番多い意見だ。
この件に限らず、混乱を嫌う人は多い。
混乱を嫌うこと自体は、当然と思う。
ただ、混乱する、という理由で誰かの発言を押さえ込むべきではないし、そんな理由で批判すべきではない、とぼくは考えている。
混乱しようがしまいが、発言は自由にすべきだ。その発言が間違っていると思うなら、その発言に対する批判も自由。
そう、ぼくは自由主義者、リベラリストなのだ。
現在の秩序を最優先する、保守主義には与しない。
友人から連絡がある。
彼となにがしかの共通点があるとは思えないのだが、なんとなくウマが合う。仕事で中央道を使うとき、わざわざ駒ヶ根で下りて、お茶に誘ってくる。だいたい1時間ほどおしゃべりして、サッと去って行く。
そんな彼からの連絡だ。喜んで、いつもの喫茶店に向かう。
珍しく、女性を連れている。
ちょっと驚いたけれど、しかし、以前にも部下(その時は男だったが)を連れていたこともあったので、そこまで驚きはしない。ネタ的な友人の悪口をならべてから
「こんなクソ野郎と一緒じゃ大変でしょ」
「いえ、そんな…」
みたいな。まあまあウケてましたよ。
ニコニコしながら黙って聞いていた友人が、おもむろに口を開く
「今度、彼女と結婚するから」
「ファッ!?」
「まぁ、離婚が成立してからだけどね」
「…ん」
冗談かとも思ったが、どうやらそうでもないらしい。
彼女がトイレに立ったとき、思わず言ってしまう。
「子供だっているじゃねーか。良いこととは思わんぞ」
「ふん。まあフツーの意見だね」
ここでい言う「フツー」には、若干(と言うかかなり)ネガティブなニュアンスが含まれる。「フツー」と言われてムッとするような、そんなある種の中2病的な感覚は、ちょっと似ているのかもしれない。
彼は少しマズいと思ったのか、
「フツーというか一般的、だね」
と言い直す。
いやしかし、仰るとおりだ。「フツーの意見」だ。加藤浩次を叩くヤフコメ民と同種の言いぐさだ。
彼の奥さんに会ったことはない。
職場結婚だったことの他は、両親と折り合いが悪いとか、肝心な時に嫁ブロックされた、みたいなハナシをチラッと聞いた程度。ぼくが奥さんに入れ込む理由はひとつもない。
そして、今度の彼女を選んだ理由を聞いて愕然とした。その理由、分かりすぎるほど分かる。ああ、ぼくと彼との共通点は、こんな所にあったのか、と。恥ずかしいので具体的には言わないが。
自分でも理由は分からないが、彼の離婚の意思を聞いて、ぼくは悲しくなった。
そもそも、結婚は自由であるべきだし、離婚も自由だ。彼女が愛人であると言うなら、とんでもなくうらやましく思っただろう。
ぼくはリベラルだ。既存の秩序の維持を第一義とはしない。
離婚経験者の友人も少なくない。そんな連中に、否定的な感情を持ったことはない。
なのに、なぜだろう。彼に「フツーの意見」を言ってしまったのは。
今回もやっぱり、1時間ほどで彼は立ち去った。
彼が去ったあと、久しぶりに、アタマを抱えて考え込んだ。
「オレ、リベラルを標榜しつつ、実際は保守なのか?」
「いや、他の離婚経験者に対しては肯定的じゃないか」
「その連中と彼とは何が違うんだ?」
という自問自答を、一晩。
悲しみの理由は、正直なところ、まだよく分からない。
ただ、他の離婚経験者の友人と、彼との違いは分かった。
他の離婚経験者の友人は、みんな女性だ。
もちろん、同級生を中学まで遡れば、男の離婚経験者も数は多い。
しかし、そういう奴らの離婚理由は、オンナつくって逃げたとか、DVとか、パチンカスで借金が莫大とか、いわゆるクズ案件ばかり。正直、友人とは呼びたくない。
マトモな男の離婚経験者も、きっといるには違いない。でも、たまに会って話をするレベルの友人の中にはいなかった。
男の離婚と女の離婚は違うのか?
ぼくは違うと思う。
なぜなら、なんだかんだ言いながら、日本は圧倒的な男社会だからだ。
具体的なデータを確認したわけではないが、女性が結婚や出産でキャリアにブランクをあけても、復帰してキャリアアップしていけるようなケースは、極めて稀だと思う。
残された女は、満足に稼いでいくことができるのだろうか?
立場の弱い者に思いを馳せる。うむ、やっぱりオレはリベラルだ。
「財産分与、ケチるなよ。オマエはどうせこの後も、えげつなく稼いでいくんだろうから」
友人には、そう伝えるべきだった。
2019年8月12日