COLUMN

 


映画「そして父になる」

「万引き家族」が素晴らしかったので、同じ是枝監督作品「そして父になる」を観た。
是枝監督スゴいな、とは思ったけれど、作品自体はそれほど楽しめなかった。

楽しめなかった理由はいくつかあるが、ひとつは、血縁というテーマに関心が持てなかったからだ。
ぼくもかつては、血縁に大きな関心を持っていた。
でも、ある日を境に、関心がなくなった。
その日、いつものようにテレビをぼんやり眺めていると、中国残留孤児の対面調査のニュースが流れていた。血液なのかDNAだったかは忘れたが、その類の検査により、親子関係を確認するというものだった。
それを聞いたとき、

「ああ、分からないんだな」

ということを、悟った。
それまでは、親子なら会えば分かる、と、なんとなく思っていた。
正確には、親子なら検査を待たずに分かってくれよ、と願っていた。
「千と千尋の神隠し」で千尋が親を正しく見分けたように、親子なら会えば分かるだろ、と。
ところが実際には分からない。ということが分かったので、ぼくの血縁に対する興味は終わった。もっとも、完全に腑に落ちるには、そこから10年くらいかかったけれど。

血縁に興味を持ったのは、ご多分に漏れず、親子関係に問題を抱えていたからだ。
親の一挙手一投足が気に入らない、というのは、多くの子どもが抱える感情だと思う。しかし、ぼくがそんな感情を抱いたのは、もう子どもとは呼べないような年齢になってからだった。

ぼくの父は教師だった。
親しい友人の中に、父親が教師という男が2人いるが、ぼくも含めた3人とも、遅れてきた反抗期とでも言うべきタイミングで、親との関係に問題を抱えていた。
家庭の文化と学校の文化のギャップに苦しむのが、通常の反抗期のタイミング。一方で、父親が教師の場合、家庭の文化が学校化されており、たとえば中学校には苦もなく順応するが、学校と社会とのギャップには苦労するので反抗期が遅れる。というのがぼくの仮説だ。
まあ、反抗期が遅れたウスノロ3人の父親が、たまたま教師だったに過ぎないのかもしれないが。

ともあれ、親子関係を考えるとき、フツー避けては通れないのが血縁の問題だ。
そして、ぼくなりに血縁についての答えが出てしまっているので、いまさら血縁がテーマの映画を観てもなぁ、というところ。

あとは、福山雅治の演じる主人公のクソっぷりがね。
身勝手にも程がある。最初から最後まで身勝手。で、当然のように、そのことに自覚はない。
是枝監督のうまさだと思うんだけど、リアルにこういう奴がいるんだよ。
そんなリアルに知るクソ野郎のこともチラチラと思い出しつつ画面を見つめていれば、そりゃもうムカつきっぱなしで、とても楽しむどころじゃないわけです。

というワケで、この映画は未婚の若い女子にオススメしたい。
福山雅治演じる野々宮良多と、リリー・フランキー演じる斎木雄大。それぞれのスペックを並べてみよう。優秀なイケメンと愉快なダメ男。
優秀なイケメンの方を選びたくなるだろ?
結果、どうなるか。映画「そして父になる」を観て、確認して欲しい。

さて、ぼくはどちらを選ぶべきか。
尾野真千子と真木よう子。
うーん…。
どっちもウェルカム!
 
 

2018年7月4日
 

 
 

ページの先頭へ