COLUMN
結果ファン
サッカー日本代表が、W杯でグループステージを突破した。
突破を決めた試合が、物議を醸している。
0-1で負けているにもかかわらず、後ろで回して時間稼ぎ。対戦相手のポーランドもボールを奪いに来なかったため、タイムアップまでのおよそ10分間、何事もなく終わった。
当然、賛否両論だ。
おもしろい。サッカーの試合よりもおもしろい。いや、当該試合はクソだったわけだから、比較の対象にならんか。
報道でしか知らないが、海外からは総スカンのようだ。
ヤフコメなんかのネットの反応を見る限り、日本国内では、9:1で肯定的に捉える向きが多いように思う。
ちなみに、我が家ではですね、
サッカー少年の直樹は
「何が悪いの?」
と。
サッカーにまるで関心のない由子は
「サムライ魂の欠片もないね。柔道なら警告だよ?」
と。
夜に弱く、座っていると寝てしまいそうだからと立って応援していた奥さんは…、ヒステリー起こして何を言っているのかよく分からない。取り敢えず、総統閣下は日本の消極姿勢にお怒りのようです。
海外からの批判ってのは、これは話半分に聞かなければならない。
批判している奴らの大半は、自国が当事国であったら、時間稼ぎを正当化するだろうから。実際、今大会でもすでに「W杯史上最悪の試合」と呼ばれた試合(デンマークvsフランス)はあったし、過去の大会で時間稼ぎに終始したゲームはいくつもある。
同じ理由で、日本の試合運びを正当化する日本の世論も、話半分に考えておくべきだろうと思う。当事国なワケだから。
利害関係を取っ払って考えねばならない。
ルールの範囲内なら何をやってもかまわないのか。
あるいは、ルールで禁止されていないことは、無条件でやって良いのか。
最初のプレーで相手のQBにけがをさせるのは、どうやらダメなようだ。
同郷の後輩を呼び出して、ビール瓶で殴るのは論外としても、説教カマすところまでならどうだろう。
5打席連続敬遠はどうなのか。
全身にローション塗って相手に身体を掴ませないようにするのは、反則か。
2罰打覚悟の上なら、まだ動いている球を打ち返す反則を故意に犯しても良いのか。
スタープレーヤーがボールを持つ度に、ファールで潰すのはOKか。10回、倒した。
レッドカードとPKを受け入れるなら、フィールドプレーヤーが手でシュートを止めにいっても良いのか。そのPKは失敗に終わった。
この度の日本代表による時間稼ぎを支持する諸君が、異口同音に言うのが、「結果がすべて」というものだ。
3試合トータルで考えなければいけない。結果、突破した。
結果的にグループステージを突破できなかったなら、批判されるべき。
なるほど。一理ある。
ただ、どうだろう。この件に限らず、「結果がすべて」というときの「結果」は、当然のようにある特定のポイントに焦点が当てられている。今回のケースで言えば、グループステージを突破するか否か、だ。
そのポイントで「結果」をはかることは、本当に自明のことなのだろうか?
たとえば、日本サッカー界とか、サッカーというゲームそのもの、という大きな視点で考えたとき、はたして「結果」はどうだったのか。
この度の試合や、デンマークvsフランス戦の結果を受け、FIFAは新たなルールの導入を検討するかもしれない。何秒以内にシュートを打たなければならない、とか。バスケットボールみたい。いや、あくまでも仮定の話だが、仮にそんなルールが導入されて、サッカーが今よりおもしろくなるのかどうか。「結果」はその時まで分からないかもしれない。
いずれにしろ、「結果がすべて」な人々は、「結果」に興味があるのであって、サッカーに興味はないように思えるのだが、どうだろう。
サッカーファンと結果ファン。
ゴーマンかましてよかですか?
サッカーファンを代表して言わせてもらうなら、真夜中にクソつまらない試合を見せられたことこそが結果であり、日本のサッカー史とW杯の歴史に、クソつまらない試合が記録されたことが結果なのだ。
この意味は、決して小さくはないと思う。
「ピッチ上の22人がボールを奪い合う」というのがサッカーであるとするならば、あれはサッカーですらなかった。
もっとも、サッカーの試合とは、我らが日本代表イレブンのみで成り立っているワケではない。あの試合がクソつまらない試合となった原因の過半は、ポーランドにある。
いずれにしても、残念だった。
ここからは決勝トーナメント。
熱戦を期待したい。スゴい試合が観たい。
2018年6月29日
2018年7月2日 タイトル変更。加筆。