COLUMN

 


写真

二人並んでカメラを構え、写真を撮る。
おそらく、似たような写真が撮れている。
たぶん、見せられた他人には区別がつかない。
でも、撮った当人たちにとっては、誰の写真なのかは重要。

「これはボクの写真」
「こっちはキミの写真」

時間が経てば、当人にだって区別がつかなくなるのだとしても。

たまに、他人の撮った写真をパクって事件になっていることがあるけれど、理解に苦しむ。パクる人にとっては、良い写真を撮るということよりも、良い写真を撮ると思われることの方が大事なのかもしれない。落第しそうな学生がカンニングするようなものか。
多くのカメラマンにとっては、むしろ逆だろう。
以前、小冊子をつくった際、撮った憶えのない写真にぼくの名前がクレジットされていて、不愉快な思いをしたことがあった。

「オレ、こんなにヘタクソじゃねーぞ」

みたいな。
うん、ぼくの写真だったのかもしれない。

区別がつこうがつくまいが、他人の評価がどうであろうが、

「オレが撮った写真はオレの写真だよ」

というのは、当然のことのように思える。
でも、実はそう単純ではない。

例えば、ぼくがモデルになって誰かに撮影してもらう。ぼくが写ったその写真は、誰の写真なのか?
新垣結衣の写った写真は、誰が撮ったってガッキーの写真。
でも、荒木経惟が撮れば、アラーキーの写真、なのかもしれない。
荒木が撮った新垣の写真。ガッキーが写ったアラーキーの写真。
見てみたい。

まぁ、実際には、ぼくレベルだとほとんど気にしていない。
ぼくが撮った写真も、ぼくが写った写真も、どちらも自分の写真として自分のサイトに載せているからね。

先日、爺ヶ岳に登った。
その山頂で、松本から来た青年と出会う。
仲良くなって、お互い写真の撮りっこ。

「帰ったら写真送るね」

と言いながら別れ、実際に写真を交換する。
ぼくが撮った彼の写真が、早速、インスタにアップされた。
こういうのも、嬉しいことだよね。
でもね、ひとつ気になることが。
「いいね!」の数が。
いま見てきたら、893も「いいね!」が付いてる。マジかよ?
ここにその写真アップするけど、せいぜい2、30だよね。「いいね!」。
いやべつに「いいね!」が欲しいわけじゃないんだけどさ、なんつーの?

「いいな」
 
気を取り直して、唐松岳へ。
山に登る理由って、いろいろあるのかもしれないけれど、ぼくにとっては、究極の風景を写真に収めたい、ってこと。

「期待をはるかに超える絶景」

なんつって、米っちょが叫んでる。
絶景、絶景、絶景。
天気も良く、素晴らしい風景の連続。
リフト、ゴンドラが営業期間外のためか、ほとんど誰とも出会わない。絶景を独占。
アルプスにこだまするシャッター音。
全部、米っちょの写真です。
カメラをクルマに忘れてきてしまいました。
死にたい。
 
 

2017年11月5日

 
 

 
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