COLUMN
トレーニング
米っちょがランニングを始めた。
「ランニング気持ちがいいよ!」
「えっ、マジ?」
「最近ちょっとハマりつつある」
「やめてよ。オレたち同じようなペースで良いコンビだったじゃん」
「来年の駒ヶ根ハーフマラソンに出てみようかと思ってるよ」
「人の話聞いてないだろ」
困ったハナシだ。
米っちょの言動に困らされたのは、初めての経験。
いや、実際、困るのだ。
先日、米っちょは一人で登山したらしい。ほんの少し前にぼくが登ったのと同じ山。ぼくが4時間かかったルートを、なんと2時間で歩ききったとか。
ここまでペースが違うと、一緒に登山することが難しくなってきてしまう。
米っちょのトレーニング問題に心を痛め、若干憂鬱な気分で本日の登山。今日は一人で有明山へ。
北アルプスにある有明山。ガイドブックには「斜度70~80度、クサリ40~50m」、ヤマレコにも「先の見えないロープ」などと書かれていたので、撤退する気満々で登りはじめた。恐いもの見たさ。
行ってみると、思うほど危険ではない。
いや、危険でないという書き方は語弊があるだろう。
恐くはない。
ずっと樹林帯なので、高度感がない。そのため恐怖心がわかないのだ。
それに、ほかの山にはここよりもはるかに危険な箇所が少なくない。有明山に、そんな極端な危険箇所はない。
単なる急坂と言ってしまえばそれまで。
ただし、その急坂が延々と続く。白河滝から1時間、ひたすら急坂。ロープに次ぐロープ。クサリ、はしご…。その間、座って休憩できる場所は、ほぼない。
疲れた下山にこのルートは危険と判断し、ピストンを避け中房温泉に下りた。
危険は回避する。
しかし、ここでひとつの問題が。
表参道登山口から登り、中房温泉に下りた。
クルマは表参道登山口に。ぼくの現在地は中房温泉。その距離、10km。
タクシーを呼ぶか、一時間半後のバスを待ち、バス停でないところで降ろしてくれるよう交渉するか、はたまた、歩くか…。
「10km踏破を成し遂げたいのなら、もはや何が起きようと揺らぐことのない――断固たる決意が必要なんだ!!」
「…」
「…」
「オヤジ…やっとできたぜ。オヤジの言ってたのが…」
「……」
「ダンコたる決意ってのができたよ」
心の中のリトル安西先生とのやり取りで、ぼくは10km歩くことを決めた。
これがオレのトレーニング。再び米っちょと山に登る日のために。急勾配のアップダウンを終えたあと、登山靴を履いての林道歩きであるのだとしても、オレはこの10kmを歩き抜く。それは、断固たる決意。
歩き始めて44分後。3.8km歩いた地点。
通りかかったおば…失礼、おねえさまが声をかけてくれ、クルマに乗せてもらった。助かった。感謝!
トレーニング?明日からやるよ。
2017年10月12日