COLUMN
ときめきエレクション
選挙が近くなると、必ず「投票に行こう」と呼びかける人が出てくる。あれは一体、なんなんだろう。
「Aさんをよろしく」
「B党に入れて下さい」
という呼びかけなら、(歓迎するかどうかはともかく)理解はできる。
でも、そういうオルグではなく、ただ単に「投票に行こう」という呼びかけ。選挙管理委員会の人なのだろうか?
ぼくなんかは
「オレ以外は全員棄権しろ」
って思ってるんだけど。
あー、ぼくの独裁国家だったら良かったのに。
If it doesn't spark joy get rid of it.
ニッポンがときめく片付けの魔法。ポア。
正直なところ、政治への興味を失って久しい。
あんなクルクルパーを首相に戴いていることを、パトリオットであるなら誰しも、国辱と思わないハズはない。けれども一方で、まぁ仕方ないか、とも思ってしまうのだ。
現状がイケていないのも、未来が暗いのも、別に彼のせいではないのだから。
そして仮に、日本で一番賢い人に総理をやってもらったとしても、おそらく我々が抱える問題のほとんどは、解決しないだろう。
成熟社会では、それぞれの利害が複雑に絡み合う。人口が一億人を超えるような成熟社会で、その絡まりをほどくことは、事実上、不可能。よって、些細な問題のひとつさえも解決できない。という確信に至ったとき、ぼくは政治への興味を失った。
日本も50年前までは政治の時代だった。
その頃は、社会全体で共有する大きな問題がいくつか。同時に、イデオロギー対立。しかし、イデオロギー対立と言っても、俯瞰してみれば、それは単なる主導権争いに過ぎなかった。誰が主導権を握ろうとも、もちろん主導権を握った者によってアプローチは異なったのであろけれど、取り組まなければならない問題は変わらない。
政治の時代、政治家は建築家にたとえられた。政治家の仕事は、設計図を描き、家を建てていくことだ、と。
その喩えで言うのなら、高度成長期に家は建ち、バブル時代にリフォームは終えたのだ。
いま必要なのは、ローンの返済であり、庭の草むしりであり、家の前のドブさらい。
残念ながら、政治家にクリエイティブな仕事は残されていない。
ぼくが有権者となって以降、もっとも優れた政治的スローガンだと思ったのは、菅内閣の「最小不幸社会」だ。
もちろん、理念と実際の政治に乖離はつきもので…、あれ?菅内閣って何やったんだっけ?全然覚えてないや。
ともあれ、スローガンとしては秀逸だった。
「最小不幸社会」は、おそらく、ベンサムの「最大多数の最大幸福」の向こうを張って考え出されたのだろう。確かに、幸福は個々人が追い求めるものであり、不幸は政治が取り除くべきもの、というのは、まったくその通りだと思う。むしろ、政治に残された仕事は、そこにしかない。
選挙カーのスピーカーからは、異口同音に
「あなたの声を必ず市政(県政)に届けます」
という声が聞こえる。
果たして本当に、それは届けるべきものなのだろうか。
数年前、我が家の前のケヤキ並木が、すべて伐られた。
ちょうどそのタイミングで、市のエライ人と話す機会があったので
「酷いじゃないですか」
と言ってみた。
すると
「市民の皆さんからの要望だから」
と。
ホントかよ?
でもその後、別の場所で別の相手に
「ウチの前の並木が伐られちゃってさ」
とぼやいたら
「あれ伐ってもらったおかげで、見通しがきくようになって良かったわ」
と言われて絶句したことがあった。
市民の皆さんからの要望は、確かにあったのかもしれない。
さらに、そのエライ人が言うには
「古い資料を見ると、ケヤキ並木にしたい、というのも市民の希望だった」
とのこと。
なんだ、そりゃ。
個人的な好みの問題に過ぎない、と言われればその通りなのだけれど、長い間そこに立っていた木が伐られてしまうのは、どうにもやるせない。
もちろん、「植えろ」と言った人と「伐れ」と言った人は、別人なのだろう。しかし、結果的に、気まぐれで木は植えられ、気まぐれで木は伐られた。
だから、ぼくは思うんですよね。
当選して政治家となった皆さんは、可能な限り市民の声を無視し、ただひたすら、リアルに困っている人に手を差し延べて欲しい。「最小不幸社会」を目指して欲しい、と。
ぼくはこの度の1票に、そんな思いを託しました。
政治に興味を失って久しいハズなのに、今回の統一地方選挙の結果には興味があった。
なぜか。友人、知人が、駒ヶ根市議会議員、長野県議会議員に、それぞれ立候補したからだ。
二人とも立派な人物。どちらも当選して、まずはひと安心。
そんな、個人的な注目。
「興味がないって言いながら、熱く語るね」
「今回は特別だよ」
「そんなに言いたいことがあるなら、自分で立候補すりゃ良いじゃん」
「やだよ」
「例のセンセも「任せてブーたれる社会から引き受けて考える社会へ」って言ってるゾ」
「そりゃそうだけど、ムリだって」
「なにがムリなんだよ。暇だろ?」
「暇はカンケーないだろ。オレが出たって誰も入れてくれないよ。供託金没収されちゃうじゃん」
「大丈夫だよ」
「そう?」
「心配することないって」
「ホントに?」
「そんな心配するほど供託金も高くないから」
「ファッ!?」
「ここ奢ってくれたら、1票入れるゼ」
次回、定員割れなら、考えマース。
2019年4月21日