COLUMN
desire
登山部のメンバーと西駒登山。
もっとも、高校の飲み会で
「今度山に登るよ」
「あ、ぼくも連れてって」
というノリで集まった数人が「登山部」を自称しているに過ぎない。
同じノリで、写真部と落研と大相撲同好会を掛け持ちしている。
そんな「登山部」のメンバーの一人、米っちょが誘ってくれたので、行ってきた。
昨年も同じようなタイミングで、米っちょと西駒登山をしている。
初めてアイゼンを使ったのも、そのときだ。
アイゼンと言っても4本爪の、ごく簡易的な物。これで去年は特に問題はなかった。
米っちょはアイゼンを10本爪のに新調している。ピッケルまで用意している。
「大げさだなぁ」
積雪140cmの昨年が問題なかったのに、100cmの今年に昨年以上の装備が必要とは思えなかった。
しかし、ぼくはすぐに数年前のスタッドレスタイヤのCMのキャッチコピーを思い出すこととなる。
「乾いた氷は滑らない」
そう、乾いた氷は滑らないが、溶け始めた雪は滑る。めちゃくちゃ滑る。
登りも大変は大変だったけれど、本当に大変だったのは下り。もう大変なんてもんじゃない。ヤバかった。
一度、2m程度だったと思うけれど、滑落。
「米っちょ、いまの撮った?」
「撮れるわけないじゃん。言葉を失ったよ!」
いや、ホントにヤバかった。
2mで止まっていなかったら、200mをまっさかさーまーに堕ちて desire 。
危うく死ぬところだった。
死ぬ思いも、無事に帰って来れば、良い思い出だ。
なにしろ、これ以上望むべくもない好天。最高の天気。
そして、同行者は米山寛。
本岳の頂上で、徳島から来たという若い山ガールと友達になっとるじゃないか!
ナイス、米っちょ。
さすが、米っちょ。
「米っちょ、サイコーだよ!」
「すごい天気だったしね」
「山ガールと友達になったしね!」
「う、うん」
「写真撮ったから、メールで送ろう!」
「おお、いいじゃん」
「メールアドレス教えて」
「え、知らないよ」
「今時はやっぱりLINE?ぼくLINEやってないけど、今日から始めるわ」
「え、LINEも知らないよ」
「じゃ、何なら知ってるの?」
「なにも…」
「……」
山は自己責任。
うん、知ってる。
2016年5月19日