COLUMN
AIしてる の に
「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!」というポルナレフ状態をリアルに眺めることになるとは、思いもよらなかった。
「アルファ碁は酷い手ですね」
「これはなんの意味がある手なんですか」
「局面はセドルが勝ってます」
「ここもセドルが良いですね」
「あれ?」
「ま、負けてる。なぜ…」
アルファ碁の手は悪そうに見えるのに、後々効いてきて、いつの間にか勝っている。
素人がプロとの対戦で抱くのと同じ感想を、プロがアルファ碁に対して抱く。
囲碁に興味のない方は、AIがプロの囲碁棋士に勝ったというニュースを、特段追いかけたりはしないのでしょう。
そんなあなたにお伝えしたい。
とんでもないことが起こっている、と。
単に、ヒトがゲームでAIに負けた、というニュースではないということ。これから、ほとんどSFチックな変化が訪れるということ。
て言うか、ぼくのこの興奮を、誰か聞いてくれ。
AI関連の記事を渉猟してみたが、どうやらいずれ、AIがヒトの知能を超えることは間違いないようだ。そのことに関しては、すべての科学者の共通認識らしい。
ただし、AIがヒトの知能を超える、そのことをポジティブにとらえるかネガティブにとらえるかは、賛否両論、真っ二つに意見が割れている。
たとえば、ホーキング博士は
「人工知能の進化は人類の終焉を意味する」
と述べている。
そう考えるヒトは、他にも大勢いる。
むしろ、直感的にはほとんどのヒトがそう思うのではないだろうか。
ぼく自身も、まず想像したのは、映画「マトリックス」の世界だった。
しかし、sleep learningの結果、ぼくが導き出した答えは、AIがヒトの知能を超えることはポジティブに考えるべきだ、というもの。
なぜか。
自分より賢い存在が、自分より愚かなことをするワケがないじゃないか。
自分より賢い奴に出会ったことがないホーキングは、賢い奴について何も知らないのだ。
誰よりも多くの、自分より賢い存在に出会ってきたぼくが断言しよう。自分より賢い奴は、自分より愚かなことなどしない。
「いずれは人工知能に取って代わられるだろう」
当然じゃないか。
それで、何が悪いんだ?
それがヒトであれ何であれ、バカな奴が実権を握ることの方が、遙かに恐ろしい。
世界中のいかなる分野の誰よりも、優れた存在が支配する社会。まさに理想郷だ。
AIが支配する社会。それはどんな社会だろう。
もっとも、多くのヒトは、AIが支配していること自体に気が付かない。
何年か前、南紀白浜にあるアドベンチャーワールドを訪れた。そこに、パンダがいる。
飼育員が、快適な環境を整え、食事の準備をし、遊んでくれる。パンダは幸せに暮らす。パンダは飼育員を、召使いくらいに思っているかもしれない。
時折、飼育員は会議室で会議をするが、もちろんパンダはその中身を知らない。知ったところで、理解もできない。
AIが飼育員。パンダはヒト。
ヒトは、動物園のパンダになる。
「自動運転、便利だなぁ」
「食事の用意もしてくれるなんて、ラクチン」
とヒトが思っているうちに、AIによる支配は完了している。
もっとも、「支配」という言葉に過敏になる必要はない。
今現在だって、ヒトはすでに様々なものに支配されている。
制度に支配され、文化に支配される。日本では宗教に支配されることはないが、かわりに、空気が支配する。
あるいは、「近代社会は、電気に支配されている」と言っても、あながち間違いではないはずだ。
AIに支配されても、おそらく多くのヒトは何も感じない。
「AI、AI、世界で一番賢いのはだあれ?」
「世界というような、未規定なことについては答えられません」
「面倒くさいなぁ。じゃあ、高校の同級生の中ならどう?」
「知らない方が良いこともあると思いますが」
「ああ、もう。いいから言ってみろよ。怒らないからさ」
「そうですね。…RKさんです」
「おおお、キタコレ。イニシャルなんてもったいつけずに、誰だよ?ふふっ」
「Ryoji Koikeさんです」
「はぁ?リョウじゃなくてリョウジ?」
「はい。リョウジさんです」
「おいっ、テメー、教えておいてやる。そういうのをジ余りって言うんだよ」
「…」
「なんとか言ったらどうなんだ」
「お気持ちはわかりますが、これは事実です」
「ぐぬぬ…」
「しかし、あなたにもまだチャンスはあります」
「なぬ?」
「いまからでもホニャララについて頑張れば、あなたにもチャンスはあります」
「マジか」
「はい」
「おほん…。そのホニャララとやらについて詳しく教えてもらえるかな?」
「よろこんで」
ちょろいわー。オレ、ちょろすぎだわー。
かくして、AIが支配する社会は、結構うまくいくと思うゾ。
ヒトが抱える問題は、すべてAIが解決してくれる。
医療も劇的に進化するし、仕事だってする必要はなくなる。仕事をする必要がなくなるということは、お金という概念もなくなって、金持ちも貧乏人もない。
圧倒的なAIの能力の前には、ヒトの個体差など誤差みたいなものになる。誰かと比べて劣等感を抱くような、そんな悩みは雲散霧消するだろう。ヒトはAIのもとに平等、そんな社会になる。
まさにユートピア。
究極的には、必ずそうなる。
ただ、問題は過渡期だ。
自動運転が実現すれば、運転手という職業がなくなることは、容易に想像できるだろう。
10年後には半分の職業がなくなるという予測もある。
薬局は、割と早い段階でなくなりそうだ。うーん…
AIの加速度的な進化に期待したい。
変えるなら一気に変えちゃって。
2016年3月18日