COLUMN

 


YAWARA!

この4月から、由子は中学生だ。
5月からはいよいよ部活も始まる。
由子は柔道部に入った。

「じゅ、柔道部?」

それを聞いた全員が同じ反応。親であるぼくも奥さんも、そういう反応だった。
思い当たる節がまったくない。
先のオリンピックで、ぼくは松本薫を熱烈に応援したが、それもその時限りのことで、親の志向が影響したとは思えない。そもそも、ぼくは柔道に対してそれほど良いイメージを持っていない。
ぼくが中学生だった頃、数学のテストが返却された際

「オレ3点。亀田97点。あわせて100点」

と叫んだ筋肉バカが柔道部だった。とても強かったらしいが、アタマは弱かった。
女子柔道と言われて真っ先に思い出すのは、内柴事件だ。
それほど良いイメージを持っていない、どころの騒ぎではない。

由子はぼくの思った方向には進まない。
いつもたいてい、予想の斜め上を行く。
それは親としてのぼくが望んだことでもあるのだが…

親が子の名を付けるとき、半分の親は、自分の願いを名前に托す。
おなじユウコでも、優しい子になって欲しいから優子、といった具合に。
ぼくは娘が生まれた際、親の希望とは関係なく自分の意志で好きなように生きていって欲しいと思った。だから、なるべく托すべき意味のない名前にしようと考えた。

白川静の「字統」を眺めながら字を探す。
手元に「字統」がないし、記憶が曖昧だけど、たしか「由」は木の実の形かなにかで、意味らしい意味はなかったハズだ。
そんなわけで、由子と名付けた。

これには後日談があって、命名した瞬間から

「どんだけサザンが好きなんだよ」
「原坊?」

と言われまくることになる。
確かにぼくがサザンオールスターズ好きなのは事実だけれど、命名のときに原由子のことはアタマになかった。これは本当だ。
最初のうちはムキになって否定していたけれど、そのうち、それも良いかと思うようになる。
好きな人の名前をとってつけるという、安易さが気に入ったからだ。

そんなわけで、由子の柔道部入りも止めたりはしない。
好きにすればいいと思う。

とりあえず、マンガを買ってみた。
「YAWARA!」全20巻。

2015年5月2日

 
 
 
 

 
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